企業の事業活動によって発生した廃棄物は産業廃棄物に分類され、廃棄物処理法によって性状ごとに細かく分類されています。そのため各廃棄物を適切に収集・運搬するためには、それぞれの性状に相応しい運搬車両が必要です。
今回は、産廃業を営むために必要な運搬車両の特徴と種類を解説します。
ウェイトが大きい産業廃棄物を収集運搬する場合は平ボディ車かダンプ車
建築現場で廃棄された瓦礫類や金属くずなどのウェイトが大きい産業廃棄物を扱う場合、あおりがある平ボディ車かダンプ車が適しています。
平ボディ車は荷台の側面があおりで囲われている仕様で上部が開放されている仕様の運搬車両を指します。小さいものでは1.5t、大型であれば10tを超える車両もあるため、廃棄物の収集規模に合わせて適したモデルを選択可能です。またユニックが備えられている車両も存在し、廃棄物を効率的に収集できるため産廃業において広く使われています。
ダンプ車は荷台部分を自ら傾斜させる機能を備えており、積載した廃棄物を一気に滑り落として排出できます。そのため瓦礫類に限らず、燃焼炉の残灰を収集運搬する用途にも適している車両です。
・土砂は廃棄物処理法が定める廃棄物に該当しない
土砂は廃棄物処理法における廃棄物に該当しないため、誤って廃棄物として処理しないように注意しましょう。また中型・大型車両を使って土砂を運搬する場合は国交省から表示番号を取得する必要があり、あおりが高い仕様のダンプ車は過積載を規制する観点から土砂を運搬する用途で使えません。
そのため土砂を収集運搬する用途でダンプ車を使う場合、基本的にあおりが低い仕様の車両を使います。一方であおりが高い仕様のダンプ車は瓦礫などウェイトの大きい廃棄物を収集運搬する用途として使いましょう。
小規模で圧縮可能な廃棄物を収集運搬する場合はパッカー車
事務所などで発生する小規模な廃棄物を扱うケースでは、廃棄物を圧縮しながら効率的に収集運搬できるパッカー車(塵芥車)が適しています。主流なパッカー車は「巻き込み式」あるいは「プレス式」の2種類であり、どちらも廃棄物を圧縮しながら収集できる構造の運搬車両です。
・巻き込み式は回転板で廃棄物を押し込んで圧縮する構造
巻き込み式のパッカー車は硬質ではない廃棄物を収集運搬する際に使われる車両であり、テールゲートの下部にある回転板で廃棄物をかき集めて上部のプレートで荷箱へ押し込む構造です。構造上プレス式よりも圧縮力は低く、硬質な廃棄物を投入すると粉砕できずにプレートが噛んでしまうこともあります。
・プレス式は圧縮力が高く硬質な廃棄物も収集できる
プレス式はテールゲート内部に備えられた2つのプレートで廃棄物を圧縮して荷箱に収集する構造であり、巻き込み式よりも圧縮力が高く幅広い廃棄物をプレスできます。電化製品などの巻き込み式では収集できない廃棄物を粉砕できるため、汎用性があり収集能力に長けている車両です。
液状の産業廃棄物を収集運搬する場合はタンク車か汚泥吸引車
汚泥を筆頭とする液状の産業廃棄物を収集運搬する場合、平ボディ車では収集できないためタンク車か汚泥吸引車を使いましょう。また廃アルカリや廃酸など液状の危険物を運搬する場合、車両に危険標識を付けなくてはいけません。
建設現場で発生したベントナイト汚泥など流動性がある廃棄物を収集運搬する場合、強い吸引力で対象をタンク内に収集できる汚泥吸引車が適しています。適応車種は大型車両だと20tを超える一方で、中型車両の場合は4tほどです。
廃棄物の種類によって最適な運搬車両を選ぶ
廃棄物は性状次第で危険物に該当するケースもあるため、産廃業を営む場合はそれぞれの事業内容にマッチした最適な運搬車両を選びましょう。また廃棄物の収集運搬車両をリースしている企業もあり、事業規模によってはリースを利用するほうが車両を運用・保守するよりもコストを抑えられるかもしれません。