産業廃棄物を発生地以外で処理をする際には自治体への届出が条例などで定められているケースがあります。
この条例を無視した運用をすると法的措置をとられる事もありますので、ここで基本的な概要についてご確認下さい。
事前協議制度とは自治体が決めた産業廃棄物の越境移動のルール
産業廃棄物の事前協議制度とは、産業廃棄物が都道府県外から搬入されたり、逆に搬出しようとする際に各自治体に届け出なければいけないルールの事です。これは、法律による規制ではなく、各自治体が独自に決めたルールである点に特徴があります。実際、すべての都道府県が事前協議制度を採用しているわけではなく、事前協議を必要としない地域も存在します。
また、事前協議という表現になっていますが、隣接する自治体と実際に産廃処理業者が協議をするのではなく、届出をするケースが多くなり、届出が必要になる条件も自治体ごとに異なります。
事前協議制度が必要になる3つの理由
産業廃棄物の事前協議が必要になるのは、理由が3つあります。
まず、県外から搬入された廃棄物量を把握したいという理由があります。県外から産業廃棄物が搬入されると、県内で排出された廃棄物だけの量を把握しても意味がありません。
また、事前協議制度がなければ、県外から搬入される廃棄物の検査や確認をする事が出来ません。県内の生活環境を守る為にも、廃棄物の性質について把握しておく必要があります。
最後は、県外から廃棄物が持ち込まれる事による、住民感情に配慮したいという理由です。大量の廃棄物が県外から持ち込まれれば、近くに住む住民は、決して快くは思わない筈です。
このような理由により、県外からの廃棄物の搬入や県外への搬出に制限を設けるという意味で事前協議制度が運用されています。
事前協議制度の導入状況
産業廃棄物の事前協議制度を採用している都道府県は、全体の約74%程度です。政令指定都市などの主な市区町村では、都道府県の方針に合わせて採用を決める傾向があります。事前協議制度の運用がない都道府県は、東京都や大阪府などの人口が多い自治体です。大量の廃棄物を排出しているにも拘らず、搬入に制限を掛けにくい事情があります。
なお、事前協議制度の導入がある自治体は、廃棄物法6条3項を根拠にしています。次に説明するように、事前協議をしない事のデメリットもあるので注意が必要です。
事前協議をしない事のデメリット
事前協議制度があるのに届け出をしないと、条例などに罰則規定があれば処罰の対象となります。条例違反の罰則がないとしても、行政指導や勧告、企業名の公表へと、自治体が次第に厳しい態度をとってくるものと思われます。
事前協議の届け出に時間や手間が掛かるのは確かですが、ルールに則った企業運営をする事は企業イメージの向上にも繋がります。事前協議制度で不明な点がある時は、専門家のアドバイスを受けて対応を検討するようにしましょう。