一般廃棄物として処分すると、環境への影響が大きい産業廃棄物は、処分場へ持っていくまでの保管や運搬にも細心の注意を払う必要があります。産業廃棄物の分類が正しくても、適切に保管できていなければ法律違反です。
自社で出た産業廃棄物を正しく処分できるようになるため、産業廃棄物の保管基準や保管時の注意点を知っておきましょう。
産業廃棄物は適切に保管することが義務づけられている
産業廃棄物処理の流れは、自社で発生した廃棄物を分別・保管した上で収集運搬するのが基本です。ただ、産業廃棄物の管理が雑だと、保管場所から漏れたり運搬中に拡散したりして周囲に被害を与えてしまいます。
そのため、廃棄物処理法の第12条第2項で、廃棄物を運び出すまでの保管基準を厳しく定めているのです。
【産業廃棄物の保管基準】
*保管場所の周りに囲いを設けること
*必要事項を記載した60センチ×60センチ以上の掲示板を設置すること
*産業廃棄物の流出や悪臭が外に漏れない状態で保管すること
*ねずみや蚊などの害虫・害獣の発生を予防すること
*積み上げ高さの上限を守ること
以上が、産業廃棄物の大まかな保管基準となります。順番に見ていきましょう。
・保管場所の周りに囲いを設けること
産業廃棄物は、野晒しで放置してはいけません。むやみに人が入らないように、また積み上げた産業廃棄物が囲いの外へ出ないように、頑丈な囲いを作る必要があります。
囲いを設置する際は、
*産業廃棄物を保管していること
*保管している産業廃棄物の種類
*管理者の名前と連絡先
*屋外の保管場所でドラム缶等の容器を使わない場合は積み上げ高さの上限
を記載した、最低60センチ四方以上の掲示も必須です。
・産業廃棄物の流出や悪臭が外に漏れない状態で保管すること
産業廃棄物による土壌汚染や流出を防ぐための対策も求められます。
水を通さないシート等を敷き詰めたり、排水口を設置したりして対策を取りましょう。動物性の残さや廃液など、悪臭の出るものを保管する場合は、悪臭対策も必要です。
・ねずみや蚊などの害虫・害獣の発生を予防すること
害虫・害獣は、衛生状態の悪い場所で発生します。周辺地域の住民に迷惑をかけてしまうほか、産業廃棄物をえさにした害虫・害獣が拡散させる可能性もあるため、保管場所は清潔に管理しましょう。
・積み上げ高さの上限を守ること
屋外、容器なしで産業廃棄物を保管する場合、「両端の囲いの一番下から50%勾配(26.5度)で線を引いたときにできる正三角形の高さ」が、廃棄物を積み上げてよい上限です。
また、産業廃棄物が囲いの片端に接しており、囲いの両端から50%勾配の線を引いたときのようにきれいな三角形を作れない場合は、
*囲いの頂上から50センチ下、そこから横に2メートルの地点から引いた50%勾配の線
*反対側の囲いから引いた50%勾配の線
の交点を求め、どこまで産業廃棄物を積み上げられるかを決めておく必要があります。
ルールを守って安全に産業廃棄物を保管しよう
産業廃棄物は、取り扱い方を間違えると自社だけでなく周辺地域の住民や自然環境にも悪影響を及ぼす廃棄物です。
そのため、廃棄物処理法では保管場所の条件を細かく定めています。積み上げ高さの上限や、掲示板のサイズなどはルールを間違えやすいです。
違法な状態で廃棄物を保管していると、刑事罰を科せられる場合もあります。
すぐに運搬できない産業廃棄物がある場合は、廃棄物処理法の保管基準を正しく守った、安全性の高い保管場所を作りましょう。